救命に転職したい人へのQ&A

前々から気になってたんですが、救命って転職で入職できる職場なんですか。

できます。

ただ、いろいろな症例を看る必要があるので、基本動作の点滴、注射に代表される器具の挿入などの処置を手取り足取り教わる時間はありません。したがって、病棟で3年は経験を積んでおくと、入職がスムーズです。



救命に転職したいと思っていますが、どんな病院に入職すれば良いですか。

救命に入職したいなら、第三次指定の病院を選びましょう。
なぜなら、ここに救命救急センターや高度救命救急センターがあるからです。



第三次指定の病院というのは、どういう病院なんですか。

患者さんの重症度により、3つの段階があるのですが、患者さんの容体に合う病院に運びます。

一次救急は、入院や手術が必要ない患者さんに医療を提供する病院です。時間外診療、休日急病センター、在宅当番医などで行います。
二次救急は、入院や手術が必要な患者さんに医療を提供する病院です。複数の病院が当番で救急医療を行う病院群輪番制や、共同利用型病院方式があります。
そして、三次救急指定の病院は、二次救急まででは対応できない一刻を争う患者さんに医療を提供する病院で、救命救急センターや高度救命救急センターがある病院です。365日、24時間体制で営業しています。



救命救急センターの仕事内容を教えてください。

初療、救命病棟での全身管理(ICU)、日常生活援助があります。
経験が長い看護師になると、ドクターカー、ドクターヘリに搭乗する人もいます。



具体的にはどのようなことをするんですか。

救命救急の現場は、一刻を争う患者さんばかりを対象に治療を行いますので、通常の流れとは全く異なります。

全体的な流れとしては、
1 初療
2 全身管理
3 日常生活援助
という順番で大まかに3段階の治療が行われます。

1 初療
初療というのは、搬送されてきた患者さんに対して施す応急処置のことです。死に瀕している患者さんの命をつなぎ留める処置を行います。
具体的な内容としては、止血、救急蘇生処置、包帯法、骨折で、各症例に適した処置を即座に行わねばなりません。

初療に入る時、最初にホットラインと呼ばれる救急隊からの受信専用電話でどんな患者さんが運ばれてくるのか、情報を教えてもらいます。
次に、患者さんの状態に合わせて、必要な処置を想定しながら、道具や薬の準備をします。
いよいよ、患者さんが搬送されてきたら、今度は医師がどんな判断をするのか予測しておき、医師の指示を即座に実行出来るようにします。
一刻を争う、非常に緊迫した空気の中で行われる業務ですので、常に先読みをして行動しなければなりません。

病院によっては、ドクターカー、ドクターヘリを所有しているところもあります。
災害や緊急事態の際に現地へ直行し、近くの病院へ搬送する間に車内や機内で応急処置をして、患者さんを死の淵から救います。

2 全身管理
次に、救命病棟での全身管理に移ります。
救命病棟とは、初療が完了した患者さんが運ばれる病棟です。

救命救急センターへ運ばれてくる患者さんは、重い症状の患者さんが大勢いらっしゃいます。そして、ほとんどの方が救命病棟での全身管理が必要となるので、集中的に治療ができるICUに入ります。

ICUとは、病院内の他科や手術室から「一命は取り留めたが、継続して経過管理が必要な患者」を受け入れ、容体が安定するまで数日24時間体制で処置をする治療室です。
こちらは、救命救急センターならではの役目というよりは、一般的なICUとあまり変わらない業務です。
具体的な内容ですが、全身状態のモニター観察、水分量のチェック、医師の処置介助、投薬で全身状態を安定させることに専念しています。
医療機器も扱うため、人工呼吸器、CHDF(血液透析)、PCPS(人工心肺装置)、IABP(大動脈内バルーンパンピング法)等、医療機器の管理もします。

搬送されてくる患者さんは、大体ご家族に付き添ってもらっているので、患者さんの治療が一段落したら、現在置かれている状況とこれからの治療計画をお話しします。
帰宅できるのか、帰宅後気を付けることはあるのか。入院になるなら、入院、治療を続けていく上で、何が必要だからどんな過程を踏んでいくのか。信頼していただくことと、治療を理解していただくことは欠かせない、重要な仕事なのです。

3 日常生活援助
そして、日常生活援助です。

患者さんの体の清拭、体位変換、排せつ介助などの生活行動を手伝います。
重症な患者さんのケアをするのが仕事のはずなのに、日常生活の援助と聞くと驚く方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、生活行動の手伝いをするのでしょうか。
答えは、早期離床の推奨にあります。

健康なひとでも、寝てばかりだと身体が弱るので、3日も床に臥せっていれば、運動能力が低下して、起き上がるのが難しくなります。
手術後で安静を余儀なくされている人に関しても例外ではありません。
体の具合が落ち着いて、運動できる能力が回復すれば、さまざまな合併症の併発や、起き上がれなくなることを防ぐため、早めに座る・立つ・歩く動作を始めるのです。

早くから床を離れることにで、自分の腰を使って座り、自立し、歩けるようになるということは、患者さんの自信を取り戻すことにつながります。
重篤な症状を経験したあとは、誰でもが「自分は元の様に座り、立ち、歩けるのか?」と、心配は尽きないはずです。早期離床は患者さんにとって、まさに社会復帰への第一歩を踏み出すきっかけとなるでしょう。



どんなスキルが身に付きますか。

まず、初療の職場においては、様々な症例を看ますので、緊急時の看護経験と、判断力が身に付きます。
投薬や外傷の処置は、医師の指示の下で行いますが、場合によっては、患者の症状をいち早く見極め、「この患者さん、○○の症状がみられるので、××を投薬した方が良いと思います。」と、患者の状況を報告し、医師の判断を仰ぐスキルも身に付きます。

病棟やクリニックの看護と全く違う、救命ならではの看護を真っ白な状態から本当に沢山勉強、実践できるので、臨機応変な対応スキルや、コミュニケーションの力がものすごく伸びるのが実感できるでしょう。

そして、ICUにおいては、人工呼吸器の知識が身に付きます。

ドクターカー、ドクターヘリに搭乗する場合は、医師一人、看護師一人の極限状況の中で処置を行います。現場到着までに現場周辺の病院を地図で探しておいて、処置で命の糸をつなぎ、近隣の病院に引き渡します。瞬時の判断力、高い技術が身に付く仕事であり、看護師業務の中でも最も過酷な勤務ではないでしょうか。ここで得られる経験は、何物にも代えがたい、とても貴重な看護の体験です。



どんな患者さんを看ますか。

敗血症、内臓破裂、急性心筋梗塞、脳卒中、心臓停止、重度外傷、脳腫瘍、突然の小児疾患など、命に関わるありとあらゆる症状の患者さんを看ます。



救命救急センターには、どんな魅力がありますか。

初療で看る患者さんについては、病歴や現在どんな病気を治療しているかの経過がわかりませんので、患者さんの状態から、手探りで症状、病気の診断をして、その後の処置につなげていかなくてはなりません。的確な処置で検査や手術へつなげた時は、安心する気持ちとともに、強い達成感があります。

ICUで担当する患者さんは片手で数えられます。時には担当する患者さんが一人のこともあります。一人一人へ事細かに専門的な看護ケアができますので、魅力的な環境だと言えます。
重篤な方々の病棟ですので、配置される人数も多いです。先輩にもすぐに相談できますし、一人で悩んで、ということとは無縁です。

基本的に激務なので、残業が少ないことも、認定看護師資格を取得してキャリアアップができること、他の科では経験できないことが網羅できるので、生涯にわたる武器を手に入れられるということも魅力の一部です。



他の科と比べて、夜勤は大変ですか。

搬送がある時は大変です。夜は、火災発生や、慢性疾患の患者さんの急変が多く、重症熱傷の患者さんや急性心不全など、重篤な症状の方が運ばれてきます。
特に、年末年始は急性アルコール中毒、餅がのどに詰まっての窒息など、普段の生活行為の延長で重症になってしまう患者さんも増えますので、盛り上がるのもほどほどにしていただけるとありがたいです。

人員に関しては、他の科より充実しています。
日勤と看護師の人数が変わらないので、夜勤で人数が少なくてきつい、ということはないです。

ただ、仮眠の時間に関しては、他の科と同様です。
常にPHSは持ったままなので、寝ても寝た気がしなくて、体はだるいです。



搬送が無いときは暇なんですか。

暇です。

そのため、本を読んだり、ネットを調べたり、時には先輩や医師に質問したりして、自習をしています。自分の知識が患者さんの生死に直接関わってくるので、「私がいなければ、患者さんの明日は無いかもしれない」と思いながら、普段からいろいろ学習することで、救急搬送される患者さんの明日を作れるように努力しています。
また、ドクターヘリ、ドクターカーを所有している病院では、出動に備えて点検や整備、必要物品の確認を怠りません。



一番辛いことは何ですか。

処置、治療の甲斐なく、患者さんが帰らぬ人となってしまうときです。

他にも、自傷行為で重症な患者さんも搬送されますが、
体の治療が終わり、社会復帰をしてもらえたと思ったら、
もう一度自傷行為に走る方が多い事です。
私たちは必死で処置をするので、やりきれない気持ちになります。



シフトはどのように組まれますか。

他の科と同じで、病院によって勤務の時間帯は様々ですが、
日勤と夜勤の二交代制、日勤と準夜、夜勤の三交代制があります。
働き方によっては、日勤のみ、夜勤のみでの勤務ができる病院もあります。

昼も夜も、看護師の数は変わらないので、搬送された患者さんの容体により、残業があることもありますが、
普段の業務が激務で、まさに体力勝負な上、多忙を極めるため、基本的には残業は少ないです。

搬送がある時と無いとき、多忙を極める日と、そうでない日の落差がものすごく激しいです。
救急搬送はいつかわからないので、患者さんが大勢いらっしゃると、昼食午後四時とか…。そんな状態でずれることもあります。

それから、持ち回りでオンコールがあります。



給料はいくらくらいもらえますか。

平均35万円くらいです。他の科だと、平均28万円くらいなので、7万高いです。

特殊勤務手当がありますし、昼と夜の人員に変動が無い分、他の科より夜勤が多ため、給料も高額に設定されています。
認定看護師の資格を取得すれば、さらなる給与アップも見込めます。



休みが取れるか心配です。

他の科と同じと考えていただければ問題ないですが、基本的に残業が無い分、むしろ、予定を立てやすい科だといえます。
とはいえ、羽目をはずして無茶するをすると、救える患者さんも救えませんので、必然的に自分の健康を管理するスケジュールを組むようになるので、その面では良い自制につながっています。
普段が激務で生死と隣り合わせの仕事ですので、業務に集中するためにも、休日はしっかりリラックスできるように気を付けています。
有給休暇と夏季休暇、年末年始の休暇をつなげて海外行ったり、心の栄養補給はみなさんしっかりしています。



将来、結婚や出産を考えてるんですが、産休、育休は取れますか。

はい。休暇は取れます。

ご家族の手助けと病院の待遇に期待できるようなら、産休、育休後も仕事を続けることができるでしょう。
働き方にしても、正社員、派遣、パートと、様々な雇用形態があります。
復職後も、時間的な問題で夜勤が気になるところだと思いますが、宿泊可能な院内保育や病児保育を実施している病院もあります。
お子さんが大きくなって来たら、一般の保育園へ預けることになりますので、その際、家庭の状況を考慮してくれる病院に絞って転職活動をされたら良いでしょう。



激務ということですが、環境は整っている感じで、入職後は友達に自慢できそうですね。

そうですね。

救命やICUにあこがれて看護師になる方もいらっしゃることでしょうから、「まさに言葉通り第一線で活躍している」看護師であり、一目置かれる対象になるかもしれません。
実際にスキルの面では科を飛び越えてまんべんなく身に付くわけですから、知識や経験から言っても、環境は整えてもらってしかるべきともいえます。
救命やICUの看護師は、まさにスーパーナースと言えるでしょう。



救命救急センターで経験を積んだら、他の科への転職はできますか

できます。

様々な症例を本当に沢山見ることになるでしょうから、知識も経験も技術も付きます。
なにより、知識や技術がありつつ、更に学習していないと続けることができない科ですので、確実にレベルアップできる現場と言えますし、そうした自分の体験をもとに次の仕事に臨むことになりますので、技術も重宝されることになるでしょう。



じゃあ、救命救急センターへ転職できれば、何でもできるようになるんですね!

はい。

経験した症例を踏まえて、転職先を選ぶといいと思います。特に救命の経験者は不足していますので、転職先でも喜ばれます。
他の科でも、速やかに処置ができることで、比較的早く入職先に溶け込むことができるのではないでしょうか。